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  • 執筆者の写真Shunya.Asami

【Workshop 2018】-地域の祭りの中でアートの場をつくるやりがいと難しさ-@さいたま市「ハッピーフェスタきたまち360」

【ワークショップレポート】


-地域の祭りの中でアートの場をつくるやりがいと難しさ-

去る10/6(土) 台風の影響も心配される中、夏が戻ってきたような晴天。

さいたま市北区で開催された「第3回ハッピーフェスタきたまち360」でワークショップを開催しました。

今回は、この企画の主催の方から「地域住民が気軽に参加出来るアートの場をつくりたい」とのお声がけを頂き実現しました。これまでの2回は、グルメやよさこい、音楽の発表中心でしたが、将来的にはアートの場も積極的に入れていきたいとの思いに賛同し、3つのワークショップを展開する運びとなりました。

最終的には、約50名の方に参加してもらい、充実した時間を過ごすことができました。 とても多くの人で賑わう地域の祭りの中で、造形活動を展開するやりがいと難しさを改めて実感した1日となりました。




①開催までの経緯

さいたま市では、2016年に「さいたまトリエンナーレ」という国際芸術祭が開催されました。私はSMF(サイタマミューズフォーラム)というチームでアートプロジェクトを展開しました。

(SMF学校@さいたまトリエンナーレ2016 http://smfartschool.wixsite.com/saitama

その中で出会った地域の方が、それぞれの現場でアートの場をつくる活動も積極的に始まり形になっています。

今回の「ハッピーフェスタきたまち360」の実行委員長さんもその一人です。360とは、もともとこのお祭りの場所がスバルの工場跡地だったことからスバルの名車「スバル360」から命名され、360度地域の方の交流の場として開いていきたいという思いがあるようです。

スバルの方や実行委員長との現場の下見、何度かの打ち合わせを経てイメージをつくり企画を練りました。











②展開した3つのワークショップ

今回、幅広い造形をプレゼントしたいと考え、「絵画・版画・写真」といった平面の作品制作を体験出来る構成にしました。







私の写真制作ワークショップ、「影をつかまえる」はカメラを使わずに写真を撮るフォトグラムの制作。

持っているもの、大切なもの、日常生活の中で集めたものを感光紙の上に置いて太陽光で約3秒当てると、不思議な影の写真ができます。時間によって太陽の角度も変わるので目で見ているイメージと影で撮影されたイメージのギャップも面白く、影でものをみることでそのものの形を改めて意識する機会にもなります。










版画制作ワークショップの「ちいさな印刷屋さん」のミナミさんは、さいたまトリエンナーレのプログラムに参加してくれたことがきっかけで知り合いました。

凸版印刷と孔版印刷の仕組みを説明しながら、ローラーを回して印刷される名刺サイズのカレンダーが出てくるなんとも言えないリアリティ。電波で飛ばして勝手にプリンタから出てくる印刷物ではなく、印刷時の圧力や抵抗から印刷の手応えを感じるワークショップでした。








絵画制作ワークショップの「お顔をトレース☆肖像画」を展開した矢花さんは、SMFのメンバーでもあり、アートの体験を多くの人に届けるアートの場をつくる活動を一緒に行っています。

親子や友人、恋人といったペアで透明のシートを直接顔に当てマジックでなぞり顔を描く体験。ペンが顔の周りや目の周りをなぞる時のこそばゆさ。そして出来上がった時のどことなく似ている顔!そのあとその人をイメージする色で色彩しラミネーターを通すと完成!完成した作品をもう一度顔に当ててみると似てる似てるの声が上がります!











以上の3つのワークショップを今回の日程と予算・スペースの規模を考え展開することにしました。




③お客さんのワクワクモード



すべてのワークショップの参加は500円。 活動目安時間は15-30分ほどで展開しました。

子どもがすごく興味を持っても材料費がかかると知ると「すいませんやめます。」といった反応や「あなたには難しすぎるよ」、「そんなに時間がないよ」と親が決めてしまう場面もチラホラ。


こうした現場でとても難しいと感じることは、「造形活動をするモードになっていない人」が多いということ。ただワークショップをするだけではなく、「この制作が楽しそう!」「やってみたい!」という興味や関心をつくる作業があって、初めてワークショップの参加に至ることをとても意識的に行わなくてはなりません。


その手立ては、完成した作品を展示することだったり、足を止めてくれた方との対話だったり、企画者自体が楽しそうに活動している表情だったり様々です。

また刻一刻と場の状況が変化することにも対応しなくてはなりません。お昼の時間帯には少なかったお客さんが、お昼過ぎにドット押し寄せたり、風が強く吹いたり、取材への対応などもやってきます。


そうした難しさは、やりがいでもあります。

私のアートの場をつくる活動は、そうした「造形活動をするモードの人」だけでなく、先述した「造形活動をするモードになっていない人」にどのように造形活動のワクワクをプレゼントできるかと考え活動しています。


その考えから、ギャラリーや美術館といったアートをするモードの人が集う場所での展開だけでなく、積極的に様々な人が行き交う場所での活動にやりがいを感じます。


見本の作品を見て「やりたい!」といった子どものワクワクを親が「お!やってみるか!」と後押しする場面も多く見られました。また活動の中で、子どもがじっくり考え試行錯誤を繰り返す中、活動目安時間を大幅に過ぎているにも関わらず、じっと子どもの指先やまなざしを見つめ待ってくれた保護者の方が多かったのも印象的でした。目の前の子どもの中で起こっているワクワクした気持ちを想像しながら充実した時間を共有しました。


「造形活動をするモード」は何も作品制作をするときにだけ発揮されるものではないというメッセージがワークショップを地域で開催する時に届けようと意識しています。

それは特別な時にしか働く、特別な力ではなく、普段の生活の中を注意深く意識してみるとそのモードはいたる場面でひょっこり顔を出しています。生活の空間に彩りを加えようと雑貨を選んでいる瞬間、新しい季節に着る服の色合いを考える時、料理の盛り付け、庭の花の配置など。


そうした「造形活動をすることは特別な人が特別な時に行うものではないですよ」というメッセージをワークショップの最後に共有できるのも、こうした様々なものが行き交う場所だからこそ、印象に残るものになると感じています。





④おわりに





昨今、地域芸術祭やアートプロジェクトが地域社会で展開される中、「つくること」だけではなく「届けること」をもつくることが求められています。そして地域社会で展開される活動だからこそ、より日常生活にリンクしたメッセージを届けられることも強く実感しました。

今回の「第3回ハッピーフェスタきたまち360」ではそのことを改めて考えることができた貴重な時間となりました。



季節外れの暑い日和に、長時間制作活動に参加していただいた来場者の方、ともにワークショップを展開してくださったミナミさん、矢花さん、ワークショップのアシスタントで入って場を支えてくれた、本郷さん、加藤さん、丸藤さん、青田さん、太田さん、鈴木さん、高橋さん、そして今回の開催にあたり大きな力を与えてくれた実行委員長の新井さん、運営の方々、さいたま市長清水勇人さんもご多忙の中、ご来場いただきました。

この場をお借りして深く御礼申し上げます。 ありがとうございました!



関連リンク


・ハッピーフェスタきたまち360

https://www.facebook.com/%E3%83%8F%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%BE%E3%81%A1360-617125055077963/


・SMFサイタマミューズフォーラム

http://artplatform.jp/


・さいたまトリエンナーレ2016

https://saitamatriennale.jp/




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