去る2016.8/27をもって個展の会期を終えた。
『呼吸する影―被爆樹木と「被曝樹木」のフォトグラム―』 ーBreathing Shadow of Bombed Trees and Radiated Treesー 浅見俊哉作品展
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地元の越谷では、2012年KAPLで開催した個展以来の個展開催となった。 2012年から継続して制作し5年目を迎えるフォトグラムの作品シリーズ『呼吸する影』の新作を含めた作品郡を東日本で展示するにあたり、2015年被爆70年の節目にヒロシマで2回の個展を開催してみえてきた、福島へのアプローチも試みた。
ヒロシマにある「被爆樹木(Bombed tree)」を、太陽を光源として直接、感光紙やデジタルセンサーに焼き付けたフォトグラム(カメラを使わずに撮った写真やその手法)に加え、今年から始まった新たな試みである、福島、千葉、埼玉の「被曝樹木」のワークも合わせて展示しようと計画した。
ヒロシマで出会ったある、アメリカの女性との対話。 その女性はおじいさんがマンハッタン計画に関わっていた科学者で、その祖父との関係の深いヒロシマを研究し多くの人にインタビューの為、来日していた。その中で、gallery-Gで開催していた個展(2015.7/28-8/2)に足を運んでくれ、どのようにヒロシマの事を未来に繋いでいくかという事について話した。 その中で、「どうしてあなたはヒロシマに関わっているのか?」といった質問をされた。私は、その問いをうけて、制作の出発が3.11の経験であること、祖母が福島県川内村の出身であることなどが思い出され、この女性の様に祖母や村の人たちの話を聞いてみたいと考えた。
それを下記にまとめた。
被爆樹木を撮影する動機に付いて http://asa19821206.wixsite.com/shunya-asami/blog/%E8%A2%AB%E7%88%86%E6%A8%B9%E6%9C%A8%E3%82%92%E6%92%AE%E5%BD%B1%E3%81%99%E3%82%8B%E5%8B%95%E6%A9%9F%E3%81%AB%E4%BB%98%E3%81%84%E3%81%A6-2016
そして今年。 福島、川内村へは、7/22-25に入り、祖母の親戚や現在除染作業に従事している方へ話を伺い、元原発で仕事をしていた伯父の命日に合わせて作品を制作した。
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(村の木である更紗満点星の影をみる)
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(撮影したフォトグラム)
ヒロシマへは、8/5-8/6に入り、毎年制作している、8:15 8/6 の時間に、最も爆心地より近い、被爆樹木シダレヤナギの影をつかまえた。今年はとても暑い日となった。クマゼミの声と鐘の音の中、黙祷をしながら露光をした。
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(被爆樹木シダレヤナギ、今年は若い枝が長く伸び多くの葉をつけていた)
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(被爆樹木アオギリ、今年も多くの種子をつけていた)
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(左から2016、2015、2014年の8/6 8:15に撮影したフォトグラム)
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(8:23:39-15:34:05 8/06 2016 風の群ー被爆樹木シダレヤナギー
Construction of Breathing Shadow A-Bombed Tree―Weeping Willow)
それに加え、特措法(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法、平成二十三年八月三十日法律第百十号)に定められた、埼玉県三郷市、吉川市、千葉県流山市の当時放射線量が高かった場所で制作をした作品を加えた新作を含む25点を発表した。
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(ホットスポットとされたエリアのフォトグラムを撮影)
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作品展を通して多くの人と、被爆樹木を通して、8:15 8/6 1945が過去ではなく、現在進行形である事を知ってもらう機会になった事、また福島や現在特措法で定められた市町村は今もなお、3.11 2011が継続的である事について、意見を交わす機会となった。
今後も継続して作品制作をしていきたいと考えている。
展覧会関連企画:
●ワークショップ「影をつかまえる」 8/20(土)13:00-15:00【雨天の場合8/27(土)】 生憎の雨天で27日に実施。
雨天の為、サイアノタイプのワークは出来ず、ジアゾ感光紙でフォトグラムの制作を行った。 作品制作を通して、フォトグラムの表現の面白さや、光を素材に制作することの可能性を共有した。
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●ギャラリートーク 8/20(土)17:00-18:00 作家による作品の解説とゲストの櫻井さんとの対談を行った。
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最初に自己紹介をし、ヒロシマの作品について、今年から始まった福島、埼玉、千葉での制作についてお伝えしました。
ヒロシマでのワークは、被爆樹木というあの日を経験した樹木が今も同じ時間を生きている事から、その時間をフォトグラムの方法でダイレクトに写しとる事で、「今」について改めて考えるきっかけになるのではないか。
ヒロシマでの制作を通して、自分の住んでいる地域に目を向けると、そこには未だに、原子力発電所の事故により飛散した放射性物質に対しての根本的な解決方法が見出せていない現実が見えてきます。
その現実に対しどのように考え、制作しているのか 現時点での考えをお伝え致しました。
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その後、前 環境省浪江町担当除染等推進専門官で元 楢葉町建設課復興庁応援職員である櫻井 裕さんから、除染の考え方や、方法、現場で感じた課題などをご紹介頂き、最後に、原発の事故後、人との関係や心そのものに大きな傷を与えてしまった事が一番の大きな事ではないかというお話があり、ギャラリートークの時間があっという間に過ぎてしまいました。
現在、2011年3.11についての話題が少なくなって行く中、越谷市に近い、三郷市と吉川市は平成24年1月「特措法※」により「汚染状況調査地域」に(埼玉県では2市)指定され、未だに除染した汚染土等の処理の根本的な解決策が見出せていない現実があります。
今回制作で訪れた祖母の実家のある福島県川内村は、幼少期に訪れたときとほとんど村の景観に変化が無い様に感じられる中、汚染土を運ぶ大きなダンプカーが次々と狭い道を行き交っていました。
(※平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法)
作品展を通して、作品に囲まれた環境でのトークは、こうした現実へのまなざしを共有し、対話の場を生み出す事が出来ます。
今日の充実した時間を糧にさらに進んで行きたいと思います。
本日は、足下の悪い中ご来場頂きました皆様へ深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
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『呼吸する影―被爆樹木と「被曝樹木」のフォトグラム―』 ーBreathing Shadow of Bombed Trees and Radiated Treesー
2012年から継続して制作し5年目を迎えるフォトグラムの作品シリーズ『呼吸する影』の新作を含めた作品展を開催します。 ヒロシマにある「被爆樹木(Bombed tree)」を、太陽を光源として直接、感光紙やデジタルセンサーに焼き付けたフォトグラム(カメラを使わずに撮った写真やその手法)に加え、今年から始まった新たな試みである、福島、千葉、埼玉の「被曝樹木」のワークも合わせて展示します。 現在の時間が直接、像として定着する作品を通して「今」について感じ、考え、対話できる時間となれば幸いです。
日時: 2016年8月17日(水)〜27日(土) 11:00-18:00(日曜休廊・最終日16:00まで)
展覧会関連企画:
●ワークショップ「影をつかまえる」
8/27(土)13:00-15:00
写真の古典技法を用いて、カメラを用いないで写真を撮る
フォトグラムを制作。手ぬぐいに夏の時間を焼き付けます
要予約:小学生以上20名。材料費千円。予約は、048-947-9135。
講師:SeeSew(浅見俊哉と田村香織のアートユニット)
場所: Gallery:K 〒343-0821 埼玉県越谷市瓦曽根3-7-7小柳ビル3F http://www.studiok-web.net/ TEL&FAX:048-947-9135
●JR武蔵野線・京葉線「南越谷駅」より徒歩7分 ● 東武スカイツリーライン・日比谷線・半蔵門線「新越谷駅」東口より徒歩7分。 ● 駐車スペース有(カーナビでお越しの際は住所で検索してください)
関連リンク: ・これまでの展覧会 http://asa19821206.wix.com/shunya-asami#!blank-2/bva5h
・クラウドファンディング 被爆樹木の写真展を広島で開き戦後70年の節目に平和を想う機会を https://readyfor.jp/projects/Shadow-of-Bombed-Trees
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