【中之条ビエンナーレ2017】
「中之条ビエンナーレ2017・アーティストトーク」に参加しました。短い時間でしたが参加者の方と和やかな時間を持てたことがとても嬉しかったです。
今回、中之条での制作のことを中心に話をしました。
制作にあたり、中之条町歴史と民俗の博物館「ミュゼ」から貴重な縄文土器や埴輪、石包丁などの資料をお借りしました。
ショーケースに並べられているこれらの資料を作品制作のために快く貸していただけたこと。このことからも、中之条ビエンナーレがこれまで築き上げてきた、中之条の地域の方々とスタッフの方々とアーティストとの信頼関係の厚みを感じました。
そうした環境の上で作品制作ができることに深い感謝の気持ちが生まれ、良い作品を創りたいという気持ちがより大きくなったことが中之条でのレジデンスの時に感じたことです。
出品作品「現在の青図 -2017」 Blue Print of NOW
450cm×235cm
Cyanotype
詳しい制作の様子はこちら!
中之条での制作は、こうした太古の人間の生活の痕跡を感じられたことから、自分で進めてきた広島での制作と、宮城での制作が繋がっていったことも大きな成果でした。メイン作品である『現在の青図 2017』は人間の生活用品を中心に円環状に配置することで、太古から現在までの人間が生きてきた「地図」のようなイメージが生まれました。中心に約5500年前の縄文土器を配置し、周辺に土偶や副葬品、埴輪、鋤、養蚕で使用する座繰り機から、広島の被爆樹木の葉、閖上の遺失物と外周に向かいます。
地中から掘り出されて「人間の生活」を見出していく発掘の作業がある一方、閖上では約5mの盛り土の上に集合住宅を立て、かつて生きていた人の土地は埋められて見えなくなっていく。その土地にまだ残された陶器のかけらから、閖上に住んでいた人の生活を想像すること、縄文土器を手にして太古の人間の生活を想像すること、そうしたことが作品を通して両面起こればいいなという願いがあります。
「影を見て様々なイメージを膨らますことができる人間の想像力を信じている」
絵画の始まりが遠くに行ってしまう恋人の影をなぞるところから生まれたという言い伝えがあります。遠くとは戦地のことでおそらくもう戻ってはこない恋人の影を通して、記憶の助けとする想像力をそこに感じることができます。広島にある「人影の石」に焼き付いてしまった影(人の存在)からも多くの想像をすることができます。
影は実物よりもリアリティを感じることがあり、実物よりも抽象的に感じることもできる不思議なものです。その両面を行ったり来たりする影をフォトグラムで捉えていく制作について改めて深く考えることができる機会になりました。
最後に、広島で今年の夏に拾ってきた被爆樹木ユーカリの葉を、トークを聞いてくれた皆さんにプレゼントしました。影になったユーカリが手元に現れ、乾燥して硬い質感とユーカリ特有の匂いを感じることで、影と現実のものの間を行ったり来たりしてもらえたらと思いました。
ディレクターの山重さんは広島の出身の方なので、広島の話も膨らみました。
これはいい忘れてしまいましたが、映画「眠る男」も生きると死ぬを行ったり来たりする存在のシンボルであったと私は感じています。
最後になりましたが、トークを聞きに来てくださった皆様、中之条ビエンンナーレ事務局の方々、博物館「ミュゼ」の方々に深く御礼申し上げます。ありがとうございました!
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